2009/10/26

人間の身体は長距離走向き:ニューヨーク・タイムズ

The Human Body Is Built for Distance : The New York Times
http://www.nytimes.com/2009/10/27/health/27well.html?_r=2&emc=eta1

ニューヨーク・タイムズ紙が『BORN TO RUN 走るために生まれた』を取り上げながら、人間の身体が「長距離走に適している」ことを解説。また、本書で登場するタラウマラ族のチャンピオン、アルヌルフォ・キマーレが履く紐で編み上げるゴムサンダルの写真もあります。
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人間の身体は長距離走向き

マラソンは身体の限界を超えたスポーツだろうか? 昔から、長距離走は身体に負荷がかかり、特に関節によくないとされてきた。それなのに、たとえば去年、アメリカでは42万5千人のマラソン・ランナーがゴールラインを跨いだ。怪我や故障の数も増えている。ある研究によれば、マラソンのためにトレーニングをするランナーの90%がその過程でケガをしているという。

しかし、長距離走についてこうした常識を覆す本がいまベストセラーになっている。『BORN TO RUN』の著者クリストファー・マクドゥーガルは熱心なランナーだが、いつも怪我に悩まされ、メキシコのタラウマラ族の地へと赴く。タラウマラ族は、薄い底のサンダルだけを履いてとてつもない距離を走る民族だ。マクドゥーガル氏は、ランニングはもともと危険なものではないと主張する。そうではなく、今風のコマーシャリズムによってトレーニング過剰になり、ハイテクシューズの流行によってランニングフォームが上達せず、結果として怪我に繋がるのだという。

「長距離ランニングなんて馬鹿げている、と思われ出したのは比較的新しく20世紀後半になってからです」とマクドゥーガル氏は語る。「ランニングが痛みや怪我と一緒に語られるようになったのもつい最近になってからです」人間がランナーになるべく進化してきたという考えには科学的な根拠もある。2007年のSports Medicine誌でハーバード大学の進化生物学者ダニエル E. リーバーマンとユタ大学の生物学者デニス M. ブランブルは、人間にだけ見られるいくつかの特徴から、耐久ランニングこそがわれわれの進化において重要な役割を果たしたことを示唆していると書いている。
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ここから記事は、人間が動物として実はいかに長距離走に適しているかを科学的に解説する。短距離では多くの動物に負けるが、長距離では馬にも勝てるのだという。こうした長距離走は、死肉を求めて動物と競争するのに役立ったという説が一般的だが、獲物を長時間追いかけて疲れさせ、捕まえる持久狩猟(persistence hunting)して新鮮な肉にありついていたという説もある。『BORN TO RUN』でも紹介されているアフリカのブッシュマンの例だ。

生体学的にいえば、無毛で発汗というクーリングダウン機能を持っていることに加え、他の動物と比べて足の指が短い点、親指が他の指と縦に揃っているため走るのに適している点も指摘しています。また、チンパンジーとは違ってバネのような靭帯と腱をもつことなど、ここらへんは、『BORN TO RUN』でも紹介されている通りです。
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もし私たちが走るために生まれてきたとしたら、なぜランナーはいつも故障するのか? 専門家は複合的な要因が働いていると指摘する。若い頃から練習していれば、腱も筋肉もそれに合わせて成長する。しかし多くの人は大人になってから走り始めるので、その身体が長距離用には成長してきていないのだ。人工の地表の上を、ハイテクシューズを履いて走れば、ランニングの生体力学も変わり、怪我のリスクが増すのだ。

解決策はあるだろうか? 長い時間、ゆっくり楽にトレイニングするのがもっともいいだろう。たまに歩きながら休むなど、持久狩猟を真似るのだ。さらに、いろいろな表面の地面を、クッショニング機能などがついていないシンプルなシューズで走れば、自然なランニングフォームに戻るかもしれない。

マクドゥーガル氏は本書の執筆中にランニングフォームを正し、分厚いクッションのついたシューズを使うのをやめた。かれはこの3年、故障知らずで走っている。
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全文和訳が以下のブログにあります。

「人間の身体は長距離に向いている」Life-LOG